2024/4/16
歩けば心身と脳が元気になる! 効果がさらに上がる8つの習慣【呼吸器内科の大谷義夫先生】
-
「健康のためには歩いた方がいい」とはよく聞きますが、実際にはどのようないい効果があるか、また具体的にどのように歩けばよいかご存じですか? 今回は医師の大谷義夫先生に「歩くこと」が体と心にもたらす影響や実際に歩く際のヒントをうかがいました。
この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年4月号に掲載の情報です。
続きを読む -
歩けば心身と脳が元気になることが医学的に証明
「健康のために歩きましょう」とよくいわれますが、それには多くの科学的根拠があります。
「アメリカ国立がん研究所の調査によると、多く歩く人は、歩かない人より死亡率が低いことが分かっています」と、大谷義夫先生。
また、歩くことは体だけでなく、心と脳に良い影響をもたらすことにも、大谷先生は注目しています。
「歩くと自律神経のバランスが整ってストレス解消につながり、うつ病などにも効果があることが証明されています。加えて、脳も活性化し、認知機能も改善します」
歩くことにより体・心・脳が元気になれば、寝たきりの原因となる脳卒中や認知症、フレイル(※)などのリスクを下げることができ、一生歩ける可能性が高まります。
「健康維持には、激しい運動ではなく、ウォーキングのような軽い運動が効果的という科学的根拠もあります。まずは座りっぱなしをやめ、少しずつ歩いてみましょう」
※フレイル...加齢により筋力や心身の活力が低下し、虚弱になった状態。放置すると要介護につながる危険が高まります。
続きを読む -
歩いて不調を改善
歩くことにより肥満解消はもちろん、血管や筋肉、免疫力など全身の機能が向上。あらゆる病気の改善を促します。
歩くと不安が和らぎ、ストレスホルモンといわれる「コルチゾール」が減少することが科学的に証明されています。
歩くことは体だけでなく、脳も活性化させます。発想力や創造力を豊かにする他、認知症の予防も期待できます。
続きを読む -
たった1回で効果を実感!
体と心を元気にする歩き方女性は65cm以上、男性は70cm以上の歩幅で歩いている人は、認知機能低下リスクが低いことが研究で分かっています。横断歩道の線の幅を目安に、広めの歩幅で歩いてみましょう。
「1万歩」を一気に歩く必要はありません
まずは座る時間を短縮
こまめに歩いて歩数を稼ぐ大谷先生は「1日1万歩」を歩くことをすすめています。
「日本人女性の1日平均歩数は、20〜65歳が6685歩、65歳以上は4656歩です。1日4000歩より8000歩、1万歩が死亡率を下げますが、1万歩からは大きく変わらないので、分かりやすい目安として1万歩としています」
実は、日本人は座っている時間が世界一長く、日中座る時間が2時間増えるごとに死亡リスクは15%増えるという調査結果も。
このことから、まずは座っている時間を短くすることが重要です。
「30分おきに100秒など、小分けで歩いても効果は十分得られます。時間がない、体力がない、運動が苦手という人でもできるのが日常の中で『歩く』こと。スーパーへ買い物に行く、トイレに立つなども、全て『歩く』ことです」
続きを読む -
歩けなかった日があれば「1週間で7万歩」と考えてもOK。
スマートフォンの歩数計アプリを活用するのがおすすめだそうです。
続きを読む -
歩く効果がさらに上がる8つの習慣
(1)朝食は「納豆+バナナ」
大豆に含まれるトリプトファンと、バナナに含まれるビタミンB6は体内で"幸せホルモン"と呼ばれる「セロトニン」に加工され、朝食で摂ると気分よく歩けます。つぶしたバナナ1本と、タレなしの納豆1パックを混ぜてのせた納豆バナナトーストがおすすめ。(2)「朝」歩く
朝、太陽光を浴びると、体内時計のズレがリセットされ、自律神経が整います。また、朝の光はセロトニンの分泌も促進。脳を目覚めさせ、夜はよく眠れるように。納豆とバナナの朝食後、太陽光を30分浴びながら歩くと効果的です。(3)「空気のいい通り」を歩く
実験では、空気がきれいな公園を歩くと、交通量が多い繁華街を歩くより肺機能が高まり、血圧が下がり、自律神経が整うことが分かっています。近隣でよいので、公園を抜ける道や遊歩道などを選んで歩いてみましょう。(4)できれば「誰かと」歩く
アメリカの研究によると、誰かと一緒に歩くと、1人で歩くより歩行速度は遅くなりますが、歩く頻度が増えたり、さまざまな人とのコミュニケーション機会が増加するなど、重要なメリットがあるそうです。友人やパートナーの他、愛犬と歩くのも良い習慣です。続きを読む -
(5)「ゆっくり」長く続ける
「速く歩く必要はありません」と、大谷先生。「歩行速度が遅い人は、高血圧でも死亡リスクは上がらない」という研究結果もあります。大人世代は、特に血管の負担や血圧を考慮すると、むしろ「ゆっくり歩き」で1万歩を目指し、継続することが大切です。
(6)「食後」に歩く
食後に血糖値が乱高下し、急激な眠気やだるさなどを引き起こす「血糖値スパイク」。これを避けるには、食べたらくつろぐ時間を減らして歩くこと。余分な糖が消費され、血糖値の急上昇を防げます。(7)階段は「下る」
階段は「上り」より「下り」の方が体に効果的。例えば、ある12週間の調査では、ひざを伸ばす筋肉量は「上り」より「下り」の方が2倍以上増え、心拍数や収縮期血圧(上の血圧)、血糖値、中性脂肪などの数値も下がりました。ただし、階段を下るときは、転倒に十分注意を。(8)歩く30分前に「コーヒー」を飲む
カフェインには脂肪燃焼効果があります。スペインの研究では、カフェイン水を飲んで30分後に有酸素運動を行うと、水を飲んだときに比べ、最大脂肪酸化率(脂肪が燃えた割合)が午前は10.7%、午後は29%上昇。コーヒーを飲んでひと息ついたら歩き始めましょう。歩くときのお供には「水」を
通常の水分補給は水で十分です。汗を大量にかいたり、脱水状態を感じたときはイオン飲料を飲むことも必要ですが、市販品は糖分が多いので飲み過ぎに注意。脱水症状になったら、簡単に作れる経口補水液がおすすめです。構成・取材・文/岡田知子(BLOOM) 撮影/木下大造 モデル/永谷佳奈(オフィス美江) イラスト/原田マサミ
<教えてくれた人>
池袋大谷クリニック 院長
大谷義夫(おおたに・よしお)先生群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、アメリカ・ミシガン大学留学などを経て、2009年より現職。国内屈指の呼吸器内科のスペシャリストとして、メディアなどで情報を発信している。著書も多数。
続きを読む - 記事一覧に戻る